メカニズム銅の超抗菌パワーのメカニズムとその効果

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銅の超抗菌パワーをもたらす、「銅の細菌標的分子」とは?

銅の超抗菌性能をもたらすメカニズムは、次の通りです。 銅は水分と反応し、強い酸化力をもつ活性酸素分子種が生成され、細菌やウイルスの標的分子を分解します。

まず、細菌が銅表面に直に触れると、その外膜が破れます。細胞にとって最大の鎧である外膜が破られると 、銅イオンが容赦なく細胞内に入り込んでいきます。 銅は、細胞の中身を攻撃し、生存に必要な生化学反応である細胞の代謝作用を阻害します。すると細胞は、栄養素の運搬や消化、損傷した外膜の修復、呼吸、増殖ができなくなります。この作用によって、細菌細胞全体が弱るという仕組みです。

あらゆる細胞の外膜には一定量の微弱な電流が流れており、細胞の内外に「膜電位」と呼ばれる電位差があります。銅の表面に細菌が付着すると細胞外膜でショート(短絡)が起こり、これによって外膜の強度が低下することが、穴が開く理由であると考えられています。 また、さび(局所的酸化)も外膜に穴が開く原因となります。これは、銅の単一分子(銅イオン)が銅表面から放出され、細胞外膜の成分(タンパク質や脂肪酸)に衝突したときに発生します。この「衝突」が酸素のある場所で起こると、「酸化的損傷」、すなわち「さび」が生じます。さびが金属片を腐食し、穴を生じさせるのに似ています。

最近の標的部位のイラスト/コロナウイルスの構造模式図と推定標的部位のイラスト

銅の超抗菌性能とは

銅及び銅合金は、世間で「抗菌性がある」と言われるレベル(抗菌活性値2.0以上)より、はるかに優れた抗菌性能を発揮します。

「抗菌効果」の評価について、「JIS Z 2801抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」では、24時間後にコントロール材に対し、生菌数を1/100以上減らすと「抗菌効果がある」と評価されます。
抗菌活性値では減少数を指数を表すので2.0以上と表現されます。
これが世間で「抗菌性がある」と言われるレベルです。

下記グラフは、無酸素銅とコントロール材(ポリエチレンフィルム)の抗菌試験の結果を表示しております。
銅の場合は2時間後に生菌が検出されなくなっております。
コントロール材の菌数も若干減少しますが、銅の表面から生菌が検出されないことから生菌数は10万分の1以下に、抗菌活性値にして5.0以上の評価となります。

つまり、銅及び銅合金銅は、“一般的な抗菌効果“の規定よりがあるはるかに優れた抗菌性能をもち、“短時間で大幅に生菌数を減らす“効果を発揮していることから、日本銅センターではこの性能を「銅の超抗菌性能」と呼ぶことにしております。

銅の優れた超抗菌性能のグラフ

銅の超抗菌パワーを米国政府が認定

2008年3月、米国環境保護庁(EPA)より、「銅、真鍮、ブロンズなどは人体に有害な致死性のある病原体を※殺菌し、公衆衛生に効果がある」(※米国環境保護庁の基準による殺菌とは、細菌を2時間以内でほとんどゼロにすることを指します)という表示が法的に認可されました。
EPAが公衆衛生に実際に効果があると認めた個体材料は銅が初めてとのこと。(登録されたのは60質量%以上の銅を含有する銅及び銅合金。Antimicrobial Copper Alloysとして約500種類の銅合金が登録されています。)
EPAの認める表示は、独立した検査機関が行った試験結果に基づくもので、EPAの定める試験方法で行われ、銅および銅合金がMRSAをはじめとする各種病原体を殺菌することを証明したのです。
今回の発表により、日本銅センターが注力する銅の超抗菌性能の研究がさらに加速し、院内感染予防という観点から、銅がもっと社会に貢献できるようになることが大いに期待されています。

コラム:金属の微量金属作用について

銅などの金属には微量金属作用と呼ばれる効果があります。わずかな量で驚くべき超抗菌作用を発揮するというものです。水などに溶け出したごくわずかな量の金属のイオンが細菌類の活動を抑える効果のことで、銅のほかに金や銀などにも同様の効果がみとめられています。 1893年、スイスの植物学者フォン・ネーゲリーが、当時では分析できないほどのわずかな量の銅イオンが水に混ざるだけで、アオミドロという藻の一種を死滅させることを発見しました。また、銀、水銀などほかの金属のイオンが混ざった水でも、同じような効果があることがわかりました。このように、ごく低い濃度の金属イオンが溶け出した液体の中で微生物や藻類などが死滅する働きは、当時の呼び方でオリゴディナミーといいました。いまでは一般的に「微量金属作用」と呼ばれています。

米国での銅の試験風景
米国環境保護庁 (EPA)
EPAの認定書例