各分野への応用銅の超抗菌・抗ウイルス性能の応用

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医療分野への応用

病気の治療のために訪れた病院で別の病気に感染する「院内感染」はコロナ禍で顕著化しましたが、かねてより、その対策は医療施設の信頼に関わる重要な課題です。当センターでは以前より医療機関とともに院内感染の予防に銅の超抗菌性能を役立てるという試みを行っています。また、銅の超抗菌性能は医療機器にも生かされてきました。

院内感染対策として

事例:北里大学病院との「Copper in Hospital」プロジェクト

2005年~2013年に神奈川県相模原市にある北里大学病院と「Copper in Hospital」プロジェクトを行いました。プロジェクトを通じて銅および銅合金の優れた抗菌性が威力を発揮し、病院における衛生環境の改善に寄与していることが明らかにされました。

医療・暮らしへの貢献に関する試験 院内感染対策参照

また、新生児室にグリップ部分を銅で覆ったボールペンと普通のボールペンを設置し、グリップ部分の接触表面の細菌を調べた結果、MRSAなどに対し、銅製ボールペンが優れた超抗菌性能を発揮することが立証できました。銅製ボールペンについての詳しい内容はこちらをご参照ください。

「Copper in Hospital」のプロジェクトリーダーである北里大学医学部・笹原武志先生は、試験の結果から、「銅や銅合金には院内感染の原因となる細菌を軽減し、衛生環境を改善させるはたらきがあると思われる」との見解を示されています。

北里大学病院が2014年春に開業した新病院では、本プロジェクトの結果を踏まえ、外来、病棟、薬剤部、栄養部の各部局に合計159組の銅合金製ドアハンドルを導入しました。採用された洋白系銅合金は耐変色性にもすぐれ、現在でも美しい光沢を保っています。継続的な細菌培養検査でも、銅合金製ドアハンドル表面に付着する一般細菌の生菌数は、クロムメッキ製のものより1/6~1/2と少ない菌数で推移しています。

参考:北里大学 医学部 微生物・寄生虫学 笹原武志氏がまとめた「病院室内環境の微生物汚染負荷軽減に向けての銅及び銅合金の活用」論文(PDF形式 1.29MB)

病棟に設置した銅および黄銅製の部材の写真
病棟に設置した銅および黄銅製の部材
MRSA培養結果の写真
ドアハンドル付着一般細菌数の経年変化のグラフ
事例:黄銅を環境表面に全面採取した「落合クリニック」

千葉県浦安市にある「落合クリニック」は、院内感染予防を狙い、内装のあらゆる箇所に黄銅を使用した世界初の"抗菌クリニック"として注目されています。

落合クリニックの落合康博院長は「設計者からの提案もあり、銅や黄銅の超抗菌性能を活かしてドアノブ、ドアハンドル、待合室の壁、受付デスクなどの表面に黄銅板を大量に使用しました。患者さんからは"内装がきれいで気持ちが癒される"と評判もなかなかです。

これからも長い期間、黄銅の超抗菌性能により院内を衛生的に保てると期待しています。

また、通常の感染予防対策と合わせ、インフルエンザの感染拡大の予防に効果が現れると良いですね」と感想を述べられています。

黄銅を環境表面に全面採取した「落合クリニック」の実験結果
黄銅を環境表面に全面採取した「落合クリニック」
黄銅を環境表面に全面採取した「落合クリニック」の写真
事例:病院として世界最大規模の銅製品を導入「千代田病院」

宮崎県日向市にある「千代田病院」。2012年6月に開院した新病院は、大量の銅部材の採用により、世界中の医療関係者に注目されました。

銅の超抗菌性能による院内感染対策に着目した同病院・千代反田晋理事長は、2012年から院内で黄銅製ドアハンドルと、コントロールとしてその一部をプラスチック製テープで覆ったものについて細菌培養検査を行ってきました。その結果、コントロール表面の細菌類の生菌数に比べて、黄銅表面での細菌類の生菌数は極めて少ない状態を維持していることが確認されました。その実証データをもとに、ドアノブやドアハンドルなど計530箇所以上、合計約1トンもの銅部材を導入しました。

千代田病院でも接触環境面を黄銅製品にすることによって衛生的に清潔な院内環境を維持し、院内感染の予防に役立てています。

千代田病院
千代田病院
晋理事長
千代田 晋理事長
ドアノブ
ドアノブやハンドルに約1トンの銅製品が使われている

医療器具として

医療器具への銅の使用は今から3000年も前の古代エジプト時代と言われ、すでに青銅製のナイフ、ペンチ、鉗子(かんし)、ピンセットなどが使われていました。このような銅製の医療器具は近代になっても利用され、メス、消毒盤、舌押え、のう盆、洗眼容器などの材料には銅や黄銅、洋白などの銅合金が使われることもあります。医療器具に銅が使われてきた理由には、主に錆びにくいこと、加工しやすいこと、そして、銅の超抗菌性能によって器具が衛生的に保たれることがあります。

現在も銅の抗菌効果が生かされている医療器具に、身動きがとれない患者さんの排尿に使われる尿道カテーテルがあります。カテーテルは、尿道から膀胱まで差し込んで使うため、身体に細菌が入り込み、感染症が起きやすいという問題があります。そのため一部のカテーテルは、細菌の入りやすい箇所に銅を用いています。

そのほかにも、子宮内避妊具(IUD)に部分的に銅を使ったものがあります。IUDは子宮内に装着して受精卵の着床を抑える器具で、T字形や杉の葉形のプラスチック製のものが多く使われています。海外では、これに細い銅線を巻いたものの避妊効果がより高いことが認められています。