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銅の安全性銅について知る

緑青

緑青とは、銅のサビの一種

新しい銅は赤褐色の色合いですが、長期間大気にさらされた銅の表面には緑色の酸化皮膜ができます。これが緑青(ろくしょう)で、化学的には塩基性炭酸銅が主成分の化合物で、サビの一種です。
サビといっても、鉄の赤サビのようにボロボロに侵されることはなく、緑青は非常に緻密な結晶状の物質で銅の表面に硬く付着して、内部の銅の腐食を防止する役目も果たしています。水やお湯、酸、アンモニアなどにも不溶の物質です。

緑青はいたずらに恐れる必要のない比較的安全なサビです。ただ、古くから銅の緑青や青水には毒があると誤解され、昭和の時代までは小学校の教科書や百科事典などに緑青を有毒とする間違った表記がされていたこともありました。
この誤解を解き、銅に対する正しい理解を得るため、日本銅センターは東京大学医学部に依頼し、緑青に関する動物実験を1974年から6年間にわたって行いました。その結果、緑青は無害同様の物質であることが確認されました。

東京神田・ニコライ堂の写真
東京神田・ニコライ堂

東京大学医学部にて行われた実験で無害と判定

この実験ではマウスを2つのグループに分け、緑青の主成分をそれぞれ400ppm、1000ppm含む飼料を寿命である約2年半の間与え続け、成長具合や生殖への影響、臓器への銅の蓄積などを調べました。

双方のグループ共に、成長率、生存率、妊娠・出産などへの障害はなく、銅添加の影響はまったく観察されませんでした。ただ1000ppm群では、肝臓への銅の蓄積が見られ、軽い肝臓の線維化が認められました。400ppm群では銅の蓄積は見られず、このくらいの濃度では、吸収や排泄の段階における調整機能が働き、体内の銅レベルを一定に保つ作用が十分にはたらいていると考えられます。

緑青に害があるか、ないかは量に関係します。400ppmという濃度は、食品の中でも銅を多く含むレバーやナッツなどのなんと、50~100倍の銅含有量です。1000ppmともなれば、日常では考えられないような高濃度となります。つまり日常では緑青や銅による害は無いと考えても大丈夫なのです。

元東京大学医学部衛生学の豊川行平教授は、「緑青は水や湯にまったく溶けないので経口的に体内に吸収されることはなく、たとえ緑青のかたまりが胃の中に入ったとしても、緑青が胃の粘膜を刺激して吐き出してしまうので、体内に吸収される前に出てしまう」と心配の必要がないことを述べています。

厚生労働省も「緑青は普通物」と判定

この結果を受けた厚生省(現厚生労働省)も、1981年から国の研究として動物実験に着手しました。そして3年間にわたる研究の結果、1984年に毒物・劇物取締法において(1)毒物、(2)劇物、(3)普通物の分類中、「緑青は普通物」に相当すると判定しました。緑青の毒物の程度は「現在チーズやバター、マーガリンに使用されている合成保存料(デヒドロ酢酸ナトリウム)と同様である」と報告しています。

「緑青は無害に等しい」との認定結果は、NHKニュースや新聞各紙に取り上げられ、全国に向けて発信されました。しかし、40年以上が経った現在でも、緑青が毒だというイメージは完全にはなくなっていません。銅と緑青の正しい知識がすべての人に広まることが、日本銅センターの願いです。

厚生省(現厚生労働省)の研究結果が発表された際の報道記事の写真
厚生省(現厚生労働省)の研究結果が発表された際の報道記事